思いつき以外の何者でもないのです。

ゴーストハントのジョンと真砂子の小話。

真砂子はナル好きが前提です。


原作未読+マンガ立ち読みアニメは見てる・・・なので、何か捏造したところがあるかもしれませんが、お気になさらず。


大丈夫な方はどうぞ。




















+心を惹かれるもの+





湯浅高校で起きた事件。
見回りをしていた真砂子が何者かによって襲われ、階段から転落し、救急車で運ばれたときのこと。


ジョンは付き添いとして、救急車に一緒に乗った。


そして病院についてからしばらくしたあとの、ほんの少しの間の出来事。










「・・・」


「あ、原さん。目が覚めましたやろか?」


(・・・この声は・・・)




まだ半ばまどろみの中の真砂子が聞いた声は、まぎれもなくジョン・ブラウンのものだった。







ー心を惹かれるものー







「私・・・」



「階段から落ちてしもうたんです。覚えとります?」



「・・・えぇ。」



ゆっくりと、真砂子は上体を起こす。

ジョンはベッドのすぐ隣で座っていた。


「あ、起きなくても・・・」


「いえ、大丈夫ですわ。」



口ではそう言いながらも、真砂子は少しずつハッキリしていく意識の中で、ソレを思い出していた。




(あの時、何か黒いものに押されて・・・)




思わず、ぎゅ、っと掛け布団を握りめた。



「・・・ほんまに大丈夫です?まだ、眠っといた方がええんとちゃいますか?」



ジョンはその細かい様子にも気づいたようで、もう一度心配そうに言う。



(・・・そういえば前から、ずいぶん心配りのできる人ですわ)



「大丈夫ですわ。ただ、ちょっと思い出しただけです。悪霊の類ではなかったのは確実だと思いますから、どうってことないですわ」



「ほんまですか。そやったら、結局犯人は誰なんですやろか・・・」



「・・・まだ、私にはわかりかねますわ」



「さいですね・・・」




・・・その後に会話は続かなかった。


思えば2人になっても、なかなか話は発展したことがない。



そしてふと時計を探してみてみると、真砂子が目を覚ましたのは、意識がなくなる前に見た時間より4時間ほど後だった。


(こんな時間・・・・・・・あら?)



「・・・?」



そういえばさっきからショリショリと音がする、と思い、真砂子はジョンを見る。



「林檎・・・?」


真砂子がジョンの手元に視線を下ろして見たものは、3つの林檎だった。
うち1つをジョンが今、皮をむいている。


「・・・あっ、ハイ、そうなんです。なかなか目を覚まさへんモンですし、さっき、売店で買ったんです。お腹もすいてはるかなぁ、と・・・」


そういえばジョンはずっと付き添ってくれていたようだった。



(・・・わざわざ、こんなに遅くまで。)




「・・・残ってくれなくてもよろしかったのに」




その言葉は、まさしく本心だった。

この青年――どう見ても同じ年ぐらいの少年にしか見えないが――の人の良さは、遠目に見ててもわかりやすかったのだが、仕事の仲間に近いからといったところで、こんな時間までは残らなくたっていいはずだ。



(言いたい事があれば、置手紙でもすればいいだけの筈なのに。)



ジョンは林檎から視線を外し、一瞬きょとんと真砂子を見て、微笑んだ。



「そんなことできまへん。目が覚めたときに1人っちゅうんのは、寂しいモンですやろ?」



真砂子の胸がざわめいた。



ナルを含めて、誰に対しても自分はひねくれて、皮肉ばかり言っている。


言ってみれば、ジョンと真砂子は「正反対」のようなものだった。



「・・・優しいんですのね。誰もかもに。」



視線を外して言う。やはり、皮肉な口調になった。



そんな皮肉もジョンには効果が無いようで、またきょとんとして、さらに今度は首も傾げてしまった。



「・・・?そうですやろか?普通・・・や、ないですか?アレ?僕何かおかしいですか・・・?」



横目に少し悲しそうな顔が見えて、真砂子は、思わずまた顔を向けて、ジョンと目が合った。



「べ、別におかしいことはありませんわ。・・・ただ、・・・・」



そこまで言って、言葉が詰まる。



(少しだけ、羨ましかった、だなんて・・・言えませんわ。)



「ただ?」



ジョンの蒼い瞳が真砂子の黒い瞳をじっと見ていて、急に真砂子は顔が熱くなって、赤くなった。



「・・・っ、な、なんでもありませんわ!」



顔を逸らした。



「??変な原さんやなぁ。」



ジョンはくすくすと笑う。
深追いしないのも、ジョンのいいところだろうか。


(うらやましいをとおりこして呆れてしまいますわ!)


赤い顔でジョンを軽くにらんでみたが、もちろん効果がなかった。



「そや、リンゴさん切れましたよ。たべれます?」



ジョンは屈託のない笑顔を向ける。



「・・・食べれ、ますけど」



対して真砂子の顔はふてぶてしかった。



「さいですか?よかった。ぎょうさんありますんで、召し上がれです」



しかし、それでも真砂子の仏頂面は気にならないようで、リンゴを切った皿と爪楊枝を差し出す。



「いやぁ、全部うさぎさんにしてしもうたんです。かわいく、出来てはりますやろか?」


ジョンは苦笑した。


「え?」



言われて、皿に目を落とすと、本当に、全部かわいらしいウサギになっていた。



(き、器用ですわね・・・)


「・・・・・・」



「どないしたんですか?・・・あぁ、これ・・・、逆に食べづらい形ではりますね。すみませ・・・」


真砂子が少しあっけにとられているうちに、ジョンは少し勘違いをしたようだった。


ジョンは少しだけ悲しい顔で笑った。


「あっ、た、食べられますわ!」


ばっ。




自分でも珍しい行動だと真砂子は思った。




ジョンが皿を引っ込めてしまう前に、手掴みでリンゴをとって、1口かじっていた。



「・・・・・・」



「・・・・・・」



流石のジョンも結構びっくりした顔で止まっていた。



「は、はら、さん・・・・」



数秒の静止後、ジョンは目をぱちくりとしながら思わずつぶやいた。


真砂子は、また顔を紅くしながら、


「・・・・・・美味しいですわ」



言った。




ジョンはまた、笑顔になった。











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(どうか、していますわ。)


(――――――――――あの人と過ごしたあの時の私は、いつもの私ではない。

いけない、彼のペースに飲み込まれてしまう。


何故?)



(何故、こんなに胸が高鳴るの?)



(私には、ナルが。)



(でも)



(惹かれているのは、何故なの・・・?)












end